フリーターが正社員に採用される条件|企業が重視する点と段階別の準備
「フリーターから正社員になりたいけれど、企業はいったい何を見て採用を決めているんだろう」と思ったことはありませんか。学歴や職歴に自信がないと、応募する前からあきらめたくなるかもしれません。
でも、国の調査を見ると、企業が若い人を正社員として採用するときに重視しているのは、学歴や経歴よりも「働く意欲」や「人とのやりとりの力」だとわかります。この記事では、厚生労働省の調査や法律のルールをもとに、フリーターが正社員に採用されるための条件を、応募前・書類・面接の段階ごとに整理しました。先に結論を書いておきます。
- 企業が若い正社員を採るときに重視する上位3つは、「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」「コミュニケーション能力」「マナー・社会常識」
- 「学歴・経歴」を重視した企業は2割台。フリーター歴があっても、条件を満たす余地は大きい
- 正社員は長く働くことが前提の雇い方。企業は「この会社で長く働いてくれそうか」を応募から面接まで見ている
企業が若い人を正社員で採用するときに見ていること
厚生労働省の「令和5年若年者雇用実態調査」では、常用労働者が5人以上いる全国の事業所(抽出調査)に、15〜34歳の若い人を正社員として採用するときに何を重視したかをたずねています(複数回答)。主な項目を抜き出すと、次のとおりです。
| 重視した点 | 新卒者の採用 | 中途採用 |
|---|---|---|
| 職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神 | 79.3% | 72.7% |
| コミュニケーション能力 | 74.8% | 66.9% |
| マナー・社会常識 | 58.6% | 58.1% |
| 組織への適応性 | 53.2% | 51.8% |
| 体力・ストレス耐性 | 36.2% | 31.4% |
| 業務に役立つ専門知識や技能(資格・免許や語学力) | 30.4% | 34.8% |
| 学歴・経歴 | 22.4% | 23.1% |
| 業務に役立つ職業経験・訓練経験 | 14.7% | 42.3% |
※若い正社員の採用選考をした事業所を100とした割合です。
上位は「意欲」「人とのやりとり」「基本のマナー」
新卒でも中途でも、上位3つの顔ぶれは同じです。どれも、特別な資格や立派な経歴がなくても、準備しだいで伝えられるものです。アルバイトで毎日お客さんや同僚とやりとりしてきた人なら、伝える材料はすでに持っています。
「学歴・経歴」を重視した企業は2割台
「学歴・経歴」を重視した事業所は、新卒・中途ともに2割台にとどまっています。「フリーターだから」「中退だから」と、応募する前にあきらめるのはもったいないです。ただし、ゼロではありません。応募資格に学歴の条件がある求人もあるので、求人票で確認しておきましょう。
中途採用では「経験」を重視する企業が4割に増える
表のいちばん下の行を見てください。「業務に役立つ職業経験・訓練経験」を重視した事業所は、新卒の採用では14.7%ですが、中途採用では42.3%に上がります。正社員の経験がない人が中途採用の枠で応募すると、経験のある人と比べられやすいということです。
そこで知っておきたいのが、既卒の人の「新卒枠」です。国の「青少年雇用機会確保指針」では、企業に対して、学校を卒業してから少なくとも3年間は新卒の枠で応募できるようにすることを求めています。卒業から3年以内の人は、新卒向けの求人も探してみましょう。
正社員は「長く働く前提」の雇い方
正社員は、多くの場合「期間の定めのない」雇用契約です。期間を決めて契約し、更新していくことが多いアルバイトと違い、定年まで長く働くことを想定した雇い方です。
企業は、採用した人に研修を受けさせたり、先輩が仕事を教えたりして、時間とお金をかけて育てます。すぐに辞められてしまうと、その分が無駄になってしまいます。だから選考では、「今できること」と同じくらい、「この会社で長く働き、成長してくれそうか」を見られます。
このことは、法律のルールにも表れています。求人で年齢を制限することは、労働施策総合推進法で原則として禁止されています。ただし例外として、「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合」には、年齢の上限を決めることが認められています(例外事由3号のイ)。この例外を使うには、職業経験を問わないことや、新卒の人と同じ扱いにすることが条件です。
つまり、求人票で年齢制限の理由として「長期勤続によるキャリア形成」(例外事由3号のイ)が挙げられている正社員求人は、経験のない若い人を採用して、長い時間をかけて育てるための求人です。正社員経験のないフリーターにとって、ねらい目と言えます。
長く働くことは、働く人にとってもメリットがあります。厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、フルタイムで働く人の月の賃金を比べると、正社員を100としたときの正社員以外の人の賃金は、20〜24歳で82.2ですが、30〜34歳で72.8、50〜54歳では55.7まで下がります。年齢を重ねるほど、差は大きくなりやすいのです。
短い期間でバイトを辞めたことがある人は
何度か短い期間でアルバイトを辞めていると、「うちでもすぐ辞めるのでは」と心配されやすくなります。隠したりごまかしたりせず、次の3つをセットで話せるようにしておきましょう。
- 事実:いつ、どのくらいの期間で辞めたか
- 振り返り:なぜ続かなかったのか(人のせいにしない)
- 今の行動:同じことをくり返さないために、会社選びで何を確かめているか
例文:「以前は、仕事内容をよく確かめずにアルバイトを選び、半年ほどで辞めたことが2回あります。今は、求人票だけでなく職場見学や面接で仕事の流れを確認し、自分が長く続けられるかを考えてから応募するようにしています。」
応募前に満たしておきたい条件
応募の段階で準備が足りないと、書類や面接で説得力が出ません。次のチェックリストで確認してみてください。
- なぜ正社員になりたいのかを、自分の言葉で1〜2文で言える
- 応募する職種を選んだ理由を説明できる
- 求人票で、仕事内容・勤務地・給与・休日・試用期間を確かめた
- ゆずれない条件と、妥協できる条件を分けて書き出した
- 平日の日中に面接に行けるよう、シフトや生活リズムを整えた
長く働ける会社かどうかを見分けるのも、応募前の大事な作業です。たとえば、厚生労働省の「ユースエール認定」は、常時雇用する労働者が300人以下の企業のうち、新卒などで正社員になった人の直近3事業年度の離職率が20%以下、正社員の月平均の所定外労働時間が20時間以下、有給休暇の取得率が平均70%以上(または年間の取得日数が平均10日以上)といった基準を満たした企業が認定されます。求人を比べるときの目安になります。
ひとりで求人を比べるのが難しいときは、就職支援サービスに相談するのも一つの方法です。私が過去に実際に使ったハタラクティブのようなサービスなら、担当者に求人の選び方や比べ方を相談できます。
応募書類で満たしておきたい条件
応募書類は、「マナー・社会常識」や「意欲」が最初に伝わる場面です。次のポイントを押さえましょう。
- 誤字や脱字、日付の書き間違いがない
- アルバイトの経験も、勤務先・期間・担当した仕事を具体的に書いている
- 空白の期間がある場合、面接で聞かれたときの説明を用意している
- 志望動機が「その会社だから」と言える内容になっている
志望動機は、「なぜこの仕事か」「なぜこの会社か」「入社後にどうなりたいか」の3つを入れると、意欲が伝わりやすくなります。
例文:「飲食店のアルバイトを3年続けるなかで、お客さんの要望を聞いて提案することにやりがいを感じ、営業の仕事に就きたいと考えるようになりました。御社は未経験の人にも研修を用意しており、長く働きながら力をつけられると考え、志望しました。まずは商品知識を身につけ、3年後には後輩に教えられる立場になりたいです。」
面接で満たしておきたい条件
面接では、表の上位の「意欲」「コミュニケーション」「マナー」に加えて、「長く働いてくれそうか」を確かめる質問がよく出ます。質問ごとに、企業が何を知りたいのかを意識して答えを準備しましょう。
| よく聞かれる質問 | 企業が確かめたいこと | 答えのポイント |
|---|---|---|
| なぜ今、正社員になりたいのですか | 意欲、本気度 | きっかけと、これからの目標をつなげて話す |
| なぜこれまでフリーターだったのですか | 振り返りができるか | 言い訳をせず、事実と今の行動を話す |
| アルバイトではどんな仕事をしましたか | コミュニケーション、仕事ぶり | 具体的な場面や数字を入れる |
| 5年後、どうなっていたいですか | 長く働く気持ちがあるか | 応募先の仕事とつなげて話す |
「なぜフリーターだったのか」への答えの例:「大学を中退したあと、やりたいことが決められず、アルバイトを続けてきました。ただ、同じ店で3年働き、新人に仕事を教える役を任されるうちに、責任のある立場で長く働きたいと思うようになりました。」
面接の中身と同じくらい、時間を守る、身だしなみを整える、ていねいな言葉で話すといった基本も大切です。「マナー・社会常識」を重視した事業所は約6割あるので、ここでつまずかないようにしましょう。
人事担当者に聞いた「採用される人」と「落ちる人」の違い
私は以前、中途採用を担当している人事の方々に、直接話を聞いたことがあります。業界も会社の大きさもばらばらでしたが、共通して言われたことがありました。それは、「応募するなら、自信の根拠を持ってきてほしい」ということです。
根拠のない自信ではなく、「自分はこういう経験をしてきたので、ここなら役に立てる」と言える材料を持って応募する、という意味です。ここでは、そのとき聞いた話を4つにまとめます。
「あなたの強みは?」に、その場で答えられるようにしておく
半導体専門商社で人事を担当している方は、こう話していました。
「面接で『あなたのセールスポイントはどこですか』と聞くと、多くの人がすぐに答えられずに考え込むんです。少し間があってから、『強いてあげれば…』と話し始める。自分を売り込むいちばんのチャンスなのに、もったいないですよね」
反対に、評価が高いのは、たとえば「業界の先輩に話を聞いて、○○の知識が欠かせないと知ったので、特に力を入れて勉強してきました」のように、強みとその根拠をセットで、すぐに話せる人だそうです。
強みやセールスポイントは、面接で必ず聞かれると考えて、事前に答えを準備しておきましょう。アルバイトの経験から強みを見つける方法は、こちらにまとめています。
評価してもらえる「具体的な材料」を持っていく
大手家電メーカーの採用担当の方からは、「どこに行っても最低限の評価と信頼を得られる、という程度の基礎力への自信は持ってきてほしい」と言われました。
別の人事担当者は、こんな話もしていました。「なんとなく応募して、不採用の通知が来ると、焦ってまた別の会社に応募する。そういう悪循環にはまっている人が多いんです。どこが強みで、入社してからどう活躍できそうか、具体的な材料を見せてほしいと、企業はみんな思っているんですよ」
具体的な材料とは、たとえば「3年間同じ店で働いた」「新人に仕事を教える役を任された」「売上を上げるために売り場の並べ方を工夫した」といった、事実や数字で話せる経験のことです。
応募者の数に焦らない
大手リース会社で中途採用を担当していた方の話は、特に印象に残っています。
「見かけの応募者は多くても、なんとなく応募してきた人を除くと、残るのは採用人数の3〜4倍くらい。採用3人なら10人前後、5人なら20人くらいです。見せかけの倍率に振り回される必要はありません」
これは私が話を聞いた当時のものなので、今の数字とは違うかもしれません。ただ、しっかり準備して応募する人は、見かけほど多くないという点は、今も変わらないと思います。
応募者の多さに焦って、準備をしないまま何社も受けるより、1社ごとにきちんと準備をするほうが、結果的に早く決まることが多いと感じています。
面接で見られている7つのポイント
人事担当者の話をもとに、面接で見られているポイントを7つにまとめました。自分がどこまでできているか、チェックしてみてください。
| ポイント | 見られていること | 準備のしかた |
|---|---|---|
| 対人マナー | 入室・退室、あいさつ、話を聞くときの姿勢 | 面接の流れを一度通して練習しておく |
| 言葉づかい | 敬語を正しく使えるか | 伝えたいことを先に文章にして、声に出して練習する |
| 好感度 | 身だしなみ、清潔感、話し方、質問の受け止め方 | 服装と髪型を整え、表情を意識する |
| 基礎能力 | パソコンの基本操作など、どの仕事でも使う力 | WordやExcelの基本は使えるようにしておく |
| 基礎知識 | 応募する業界や会社のことを知っているか | 会社のホームページや業界のニュースに目を通す |
| 信頼度 | 話の中身に一貫性があり、うそがないか | 経歴と志望動機のつながりを整理しておく |
| 将来性 | 入社後に伸びていきそうか | これから身につけたいことと、そのための行動を話せるようにする |
話を聞いた人事の方は、面接の対策をしないまま来る人が多すぎるので、練習をしてくるだけでも印象がよくなると話していました。
私も就職活動のときは、ハタラクティブの模擬面接で、自分の経歴をどう話せば面接官が納得しやすいかを一緒に考えてもらいました。一人で練習するのが難しい人は、就職支援サービスの模擬面接を使うのがおすすめです。
変化に対応できる人は評価されやすい
企業が若い人を採用するときに期待しているのは、今のスキルだけではありません。入社してから環境や仕事が変わっても、気持ちを切り替えて対応できるかも見られています。
仕事では、部署が変わったり、やり方が変わったり、思ったような結果が出なかったりすることがよくあります。そのときに、すぐに頭を切り替えて次の手を考えられる人は、どの会社でも評価されやすいです。
反対に、評価が下がりやすいのは、こんな人です。
- 「誰にも教わっていないからできない」と、すぐに人のせいにしてしまう
- 壁にぶつかるたびに、逃げ道を探してしまう
- 結果が出ないときに、自分でできる工夫を考えようとしない
上で見た調査でも、企業がいちばん重視していたのは「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」でした。変化に向き合う姿勢は、この「意欲」を伝える材料にもなります。
フリーターの経験から「変化への強さ」を伝える
変化への強さは、アルバイトの経験からでも十分に伝えられます。たとえば、次のような経験がないか思い出してみてください。
- 新しい業務やポジションを任されて、覚えて対応した
- 店のやり方が変わったときに、すぐに慣れて周りに教えた
- 忙しい時間帯の回し方を、自分なりに工夫した
- いくつかのアルバイトを経験して、どこでも早くなじめた
私自身、就職して最初の数か月は、毎日決まった時間に出社することにさえ苦労しました。それでも、フリーターのときにもつらいことはあったので、今逃げても同じだと思って踏みとどまりました。接客のアルバイトで身についたコミュニケーション力のおかげで、社内の人とも早く打ち解けられました。そのときのことは、こちらにまとめています。
アルバイト先の「正社員登用」も採用ルートの一つ
今のアルバイト先で正社員になる道もあります。同じ「令和5年若年者雇用実態調査」では、正社員以外の人を正社員に転換させる制度がある事業所は59.9%でした。
ふだんの勤務ぶりを見てもらえているので、「意欲」や「長く働けるか」を伝えやすいのが強みです。ただし、制度があっても、実際に何人が登用されているかは会社によって違います。店長や人事の担当者に、条件と実績を聞いてみましょう。
まとめ
- 企業が若い正社員の採用で重視する上位3つは、「職業意識・勤労意欲・チャレンジ精神」「コミュニケーション能力」「マナー・社会常識」
- 「学歴・経歴」を重視する企業は2割台。フリーター歴だけで決まるわけではない
- 中途採用では経験が重視されやすいので、卒業から3年以内なら新卒枠も探す
- 正社員は長く働く前提の雇い方。短期離職の説明や会社選びの理由を準備しておく
- 応募前・書類・面接の各段階で、チェックリストを使って準備する
- 人事担当者の話では、「強みとその根拠をすぐに話せる」「具体的な材料を出せる」「面接の練習をしてくる」人が評価されやすい
- 環境や仕事が変わっても、気持ちを切り替えて対応できる姿勢も見られている
正社員に採用される条件の多くは、生まれつきの才能ではなく、準備で満たせるものです。まずは、アルバイトの経験を書き出して、「意欲」「コミュニケーション」「マナー」を伝える材料を集めるところから始めてみてください。
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