就職の軸の決め方|フリーター・既卒が「なぜ就職するか」を言葉にする手順
「とりあえず正社員になりたい」と思って求人を見始めたものの、どの会社も同じように見えて決められない。フリーターや既卒の人が就職活動を始めると、こうした壁にぶつかることがよくあります。
原因の多くは、会社を選ぶための基準、いわゆる「就職の軸」がまだ言葉になっていないことです。この記事では、なぜ就職するのかを書き出すワークから、軸の優先順位のつけ方、面接の志望動機へのつなげ方まで、順番に進められるようにまとめました。先に結論を書いておきます。
- 就職の軸とは、会社や仕事を選ぶときの「自分なりの判断基準」のこと
- 軸は、「なぜ就職するのか」を書き出し、不満を「〜したい」に言い換えると見つかりやすい
- 軸はたくさん並べず、「ゆずれない」「あればうれしい」「こだわらない」に仕分けて、ゆずれないものを1〜2個に絞る
- 軸は志望動機の土台になる。軸→自分の経験→その会社を選ぶ理由→入社後の順に話すと一貫する
就職の軸とは?なぜ必要なのか
就職の軸とは、たくさんある求人の中から「この会社に応募する」「この会社はやめておく」を決めるための、自分なりのものさしです。「就職のテーマ」と言いかえてもかまいません。
軸がないまま求人を探すと、給料が少し高い、家から近い、なんとなく名前を知っている、といった目についた条件だけで選びがちです。すると、入社してから「思っていたのと違う」と感じやすくなります。
厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況(令和4年3月卒業者)」によると、就職してから3年以内に辞めた人の割合は、大学卒で33.8%、高校卒で37.9%でした。辞める理由は人それぞれですが、入る前に「自分は何を大事にしたいか」を決めておくことは、入社後のずれを減らすいちばん手軽な準備です。
軸がはっきりしていると、次のような場面で迷いにくくなります。
- 応募する会社を選ぶとき
- 面接で「なぜうちの会社なのか」と聞かれたとき
- 複数の内定が出て、どこに入るかを決めるとき
ステップ1:なぜ就職するのかを書き出す
まずは紙かスマホのメモに、「なぜ今、就職しようと思ったのか」を思いつくまま書き出してみましょう。きれいな文章にする必要はありません。10分ほど時間をとって、次の質問に順番に答えていくのがおすすめです。
書き出しに使う質問
- 就職しようと思ったきっかけは何か(いつ、何があったか)
- 今の生活で、いちばん変えたいことは何か
- 5年後、どんな生活をしていたら「就職してよかった」と思えるか
- アルバイトや学校で、時間を忘れて取り組めたことは何か
- 反対に、どうしても苦手だった作業や環境は何か
- 人から「助かった」「上手だね」と言われたことは何か
「〜したくない」は「〜したい」に言い換える
書き出してみると、「収入が不安定なのが嫌」「立ちっぱなしの仕事はもう嫌」のように、今の不満がたくさん出てくると思います。それ自体は自然なことです。
ただ、不満のままだと、会社を選ぶ基準にも面接の答えにも使いにくいので、「〜したくない」を「〜したい」に言い換えておきましょう。
| 書き出した不満 | 言い換えた「したいこと」 |
|---|---|
| シフトが減ると収入も減るのが不安 | 毎月の収入が安定した働き方をしたい |
| ずっと同じ作業で、何も身についていない気がする | 経験が積み上がって、仕事の力がつく環境で働きたい |
| 夜勤で生活リズムが崩れた | 日中に働いて、生活リズムを整えたい |
| 親に心配をかけている | 自分の収入で生活を安定させて、家族を安心させたい |
| 言われたことをこなすだけでつまらない | 自分で工夫したことが結果に出る仕事がしたい |
右側の「したいこと」が、就職の軸の候補になります。
ステップ2:軸の候補を並べる
次に、ステップ1で出てきた「したいこと」を、会社選びの条件に置きかえていきます。就職の軸になりやすい項目は、だいたい次のようなものです。
- 収入:月給、賞与、昇給のしくみ
- 安定:正社員として長く働けるか、会社の事業が続きそうか
- 仕事内容:毎日どんな作業をするのか、自分に向いていそうか
- 身につく力:資格や専門知識など、次の仕事にも使える経験が得られるか
- 働き方:勤務時間、休日、残業、転勤の有無、勤務地
- 職場の環境:研修の手厚さ、年の近い先輩がいるか、社風
ここで大事なのは、ひとつひとつの軸を、できるだけ具体的な言葉にしておくことです。「休みが多い会社」ではなく「土日休み」、「給料がいい」ではなく「手取りが今のバイト代より多い」のように書くと、求人票と見比べやすくなります。
ステップ3:優先順位をつける
候補を並べたら、それぞれを「ゆずれない」「あればうれしい」「こだわらない」の3つに仕分けます。書き方の例を載せておきます。
| 軸の候補 | 仕分け | 具体的な中身(例) |
|---|---|---|
| 収入の安定 | ゆずれない | 月給制の正社員で、手取りが今のバイト代以上 |
| 仕事の力がつく | ゆずれない | 研修があり、数年後に任される仕事がイメージできる |
| 日中に働ける | あればうれしい | 夜勤なし。早番・遅番のシフトくらいなら大丈夫 |
| 勤務地 | あればうれしい | 家から通勤1時間以内 |
| 会社の知名度 | こだわらない | 聞いたことのない会社でも中身で判断する |
| 職種 | こだわらない | 営業・事務・販売のどれでも検討する |
「ゆずれない」は1〜2個に絞るのがポイントです。全部をゆずれない条件にすると、応募できる求人がほとんど残らなくなってしまいます。フリーターや既卒からの就職では、未経験から始められる求人の中から選ぶことが多いので、「こだわらない」をあえて作っておくと、選択肢がぐっと広がります。
仕分けに迷ったときは、「この条件が満たされない会社に入ったら、1年続けられるか」と自分に聞いてみてください。続けられないと思うものは「ゆずれない」、なんとか続けられそうなものは「あればうれしい」です。
軸どうしがぶつかったとき
たとえば「収入を上げたい」と「残業はしたくない」は、会社によってはぶつかることがあります。このときは、どちらがステップ1の「なぜ就職するのか」の答えに近いかで決めます。
一番の理由が「一人暮らしをするためのお金をためたい」だったなら収入を、「体調を崩さずに長く働きたい」だったなら働き方を優先する、という考え方です。答えに迷ったら、ステップ1のメモを読み返してみましょう。
ステップ4:軸を求人選びに使う
軸が決まったら、求人票を見るときのチェックリストとして使います。
- ゆずれない軸について、求人票に書いてあるか(書いていなければ面接で質問する)
- 月給に固定残業代が含まれていないか、含まれているなら何時間分か
- 年間の休日数や、休みの曜日
- 研修や教育のしくみが書かれているか
- 試用期間の長さと、その間の条件
求人票だけではわからないことも多いので、会社のHPや説明会、面接での質問も使って確かめましょう。自分に合う会社の見分け方は、こちらで詳しく解説しています。
軸を志望動機につなげる方法
就職の軸は、そのまま志望動機の土台になります。面接官が志望動機で知りたいのは、「なぜこの会社なのか」と「入社して続けてくれそうか」です。軸がはっきりしていると、この2つに筋の通った答えを返せます。
志望動機の組み立て方
- ①自分の就職の軸(何を大事にして仕事を選んでいるか)
- ②その軸を持つようになった経験(アルバイトや学校での出来事)
- ③その会社が軸に合っていると思った理由(求人票・HP・説明会で知った事実)
- ④入社後にやりたいこと
例文1:接客のアルバイトから営業職に応募する場合
「私は、自分の工夫が結果として目に見える仕事をしたいと考えて、仕事を選んでいます。カフェのアルバイトで3年間働く中で、常連のお客様の好みを覚えておすすめのしかたを変えたところ、追加の注文が増えた経験があり、相手に合わせて提案することにやりがいを感じるようになりました。御社は、未経験で入社した社員にも先輩が同行して提案の進め方を教える研修があると説明会でうかがい、接客で身につけた力を土台にして提案する力を伸ばせると考えました。入社後は、まず担当するお客様の困りごとをいち早くつかむところから取り組みたいです。」
例文2:既卒で事務職に応募する場合
「私は、長く続けながら専門的な力をつけられる仕事を軸に、就職先を探しています。大学卒業後はアルバイトをしながら就職活動を続けてきましたが、その間に簿記の勉強を始め、数字をきちんと合わせる作業が自分に向いていると気づきました。御社の求人票に、経理の補助から始めて、決算の業務まで段階的に任せていく育成の流れが書かれていたことにひかれました。入社後は、簿記の上の級を目指しながら、正確で早い処理ができるようになりたいと考えています。」
待遇だけを理由にするのは避けよう
「土日休みで残業が少ないので志望しました」のように、待遇だけを理由にするのは避けましょう。待遇を大事にすること自体は悪くありません。ただ、それだけだと「条件がいい会社ならどこでもいいのでは」と受け取られてしまいます。
働き方を軸にしている人は、「長く働いて力をつけたいので、無理なく続けられる環境を大事にしている」のように、なぜそれが大事なのかまで話すと伝わり方が変わります。職種別の例文は、こちらにまとめています。
「あなたの就職の軸は?」と聞かれたときの答え方
面接で、就職の軸そのものを聞かれることもあります。「軸を1〜2個」+「そう考える理由」+「この会社との関係」を、1分くらいで話すのが目安です。
例:「私の就職の軸は、毎月の収入が安定していることと、仕事の力が積み上がっていくことの2つです。アルバイトではシフトによって収入が大きく変わり、将来の計画が立てにくかったため、まずは正社員として安定して働きたいと考えました。そのうえで、年齢を重ねても通用する力をつけたいので、研修や資格取得の支援がある御社を志望しています。」
ここで話した軸と、志望動機や自己PRの中身がずれていないかも確認しておきましょう。面接全体の準備は、こちらも参考にしてください。
軸がどうしても決まらないときは
書き出してみても軸が見えてこない人も、心配しすぎなくて大丈夫です。働いたことのない仕事について「自分に合うか」を想像だけで決めるのは、もともと難しいことです。次のような方法も試してみてください。
- 適職診断を使う:自分では気づかなかった向き・不向きのヒントになる
- 職場見学や説明会に行く:実際の職場を見ると「ここは違う」「これならできそう」がはっきりする
- 人に話す:家族や友人に話しているうちに、自分が何を気にしているのかが整理される
- 就職エージェントに相談する:面談で質問に答えていくことで、軸の整理を手伝ってもらえる
就職エージェントは、フリーターや既卒の就職をあつかうところを選ぶと相談しやすいです。たとえばハタラクティブでは、最初の面談でこれまでの経験や希望を聞いてもらいながら、どんな仕事が合いそうかを一緒に考えることができます。
また、大学などを卒業した既卒の人は、卒業後少なくとも3年間は新卒の枠で応募できるようにすることが、国の指針(青少年雇用機会確保指針)で企業に求められています。すべての会社が受け入れているわけではありませんが、新卒向けの説明会にも参加して、いろいろな業界を見比べるのも軸を見つける方法の一つです。
まとめ
- 就職の軸は、会社や仕事を選ぶための自分なりの判断基準
- 「なぜ就職するのか」を書き出し、不満を「したいこと」に言い換えると、軸の候補が見つかる
- 軸は「ゆずれない」「あればうれしい」「こだわらない」に仕分け、ゆずれないものは1〜2個に絞る
- 志望動機は「軸→経験→その会社を選ぶ理由→入社後」の順に組み立てる
- 決まらないときは、適職診断・職場見学・エージェントへの相談も使う
一人で軸を決めるのが難しいと感じたら、就職エージェントの面談を「軸を整理する場」として使うのもおすすめです。
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